2005年07月07日

童話 幸福の地蔵 【は行抜き】

1 諸行無常
おじいさんの家でお坊さんたちが地蔵になった怪事件から、数世紀が経ちました。おじいさんも家もすでになく、お地蔵様たちは盗掘人の手によって遠い国に売りだされました。具体的に言うと、後のアイルランド共和国の首都でした。

街のみんなが珍しがったので、街を見下ろす小高い丘が、お地蔵様たちに用意されました。市民からお地蔵様に、西洋傘と手ぬぐいが送られ、とても大切にされました。


2 衆生
小高い丘に安置されて数日後、お地蔵様たちが丘の上で語り合いました。
「ここからだと衆生の苦しみが良く見える。あの川岸の子を見よ。病で寝たきりにもかかわらず、貧しさのあまり薬も貰えず医者にもかかれず、ただ川の水を飲んでお迎えを待っておる」
「いかにも。あのような心根の優しい子を見殺しにすることなどできぬ」
お地蔵様たちは夜中、子供の家にこっそりと金銀財物と米俵を置いてかえりました。そのとき子供のお母さんが、徹夜で金持ちのためのドレスを縫う内職をしていましたが、石がごろごろ転がるような音に気づいて扉を開けると、金銀財物がザックザク。「これで薬が買えるわ。神様ありがとうございます」

この調子で、お地蔵様たちは衆生を次々と救っていきました。


3 鳥
ある夜のこと、スズメ目の黒い鳥が、お地蔵様の足元に止まりました。お地蔵様が鳥に向かって言いました。
「頼みがある。時計台の隣の長屋に若者がおる。殊勝にも街の劇団のために劇を書いておるが、貧しくて米も買えず、文字も書けぬくらい衰えている。どうかわしらの代わりにお釈迦様のありがたい教えを伝え、劇を完成させる手伝いをしてやってくれぬか」
「お安い御用です」


4 オスカー・ワイルド
劇作家の若者が飢えと創作に苦しんでいると、スズメ目の黒い鳥がやってきて、ありがたい教えを伝えました。
「ありがとう、これでたくさん小説やら劇やらがかけるよ」
憑かれたように劇を書き綴ってゆきました。
後年、有名になる作家、オスカー・ワイルドの若いときの姿がこの若者でした。


5 鳥の死
オスカー・ワイルドのたっての願いで、鳥が繰り返しありがたい教えを伝えることになりました。しかし、鳥にとって冬季の寒さを生き抜くことができないので、南に行かなければならなくなってきました。ワイルドが泣いてお願いしました。
「鳥さん、お願いだ、行かないでくれ。今ちょうど売れてきたところなんだ。今行かれると困る。頼む」
優しい鳥がワイルドの願いを聞いてあげました。しかし、冬季の長期滞在が鳥の寿命を縮め、鳥は死にました。自責の念に駆られたワイルドにとって、鳥にしてあげられることがありました。鳥と自分の体験を元に童話を書くことです。この童話で、地蔵が王子に、金銀財物と米俵がルビーや金の欠片に、オスカー・ワイルドが匿名の劇作家として描かれていますが、世界中の感動を呼ぶ童話となりました。


6 業
鳥のおかげで売れっ子作家になったワイルドも、初心を忘れ調子に乗って書いた「サロメ」がキリスト教をコケにしていると攻撃されたり、当時禁止されていた同性愛が見つかり、2年間に渡り投獄されたりして、失意のうちに世を去りました。
お地蔵様たちも、助けてあげた貧しい子供のうちの誰かがIRAの闘士になり、テロに巻き込まれて壊されました。お地蔵様たちをお参りに来た英国首相を火薬の炸裂で殺害する計画に巻き込まれ、火薬を仕掛けられたのです。

そんな下界の様子を、お釈迦様が天から見ておりました。

めでたしめでたし。
posted by ちんこ寺 at 01:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 昔話 b_entry.gif

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