2006年03月20日

再び明治三十四年のスパム

明治三十四年のスパムの補足説明です

 はてなブックマーク‐不備日報:明治三十四年のスパムのコメントで、id:yumizouさんとid:tks_periodさんが、明治時代の投稿職人をスパム扱いするのはどうなんだろう?という疑問を投げかけてくれました。そこで昨日の記事を読み返してみたのですが、確かに何の予備知識もなしにあの記事を読んだらそう思うだろうなと思って自分の説明不足を反省しました。そこで、補足説明をします。



■補足:三月十三日の墨汁一滴

 当時の投稿俳人の中には、芸術活動として俳句を楽しむのではなくて、雑誌に掲載されて目立ちたいだけの人も多かったようです。墨汁一滴三月十三日のエッセイ(青空文庫参照)に、当時の投稿俳人たちの様子が描かれています。以下、口語訳にします。
多くの人の俳句を見ると、自分の頭をしぼってしぼって考え出した俳句は非常に少なく、新聞や雑誌の載っている他人の句を五文字くらい置き換えてすっとぼけて投稿しているようです。一例を挙げると、

○○○○○裏の小山に上りけり

という十二句があるとすれば、初めの五句に季語を当てはめて俳句を製造するのです。「長き日の」「のどかさの」「霞む日の」「炉(ろ)塞いで」「桜咲く」「名月や」「小春日の」等どんな五文字をくっつけてもたいていそれっぽくなります。非常に重宝な十二字です。あるいは

灯(ひ)をともす石燈籠(いしどうろう)や○○○○○

という十二字を使えば「梅の花」「糸柳」「糸桜」「春の雨」「夕涼み」「庭の雪」「夕時雨(しぐれ)」など様々な五文字をくつつけるのです。あるいは

広目屋の広告通る○○○○○

という十二字なら、「春日かな」「日永かな」「柳かな」「桜かな」「暖き」「小春かな」などを置きます。こういうことをするためにあらかじめ新聞雑誌の俳句を切り抜いておき、いざ俳句を作ろうという時にそれをひろげてあっちこっちを取り合せ、十句でも百句でもあっという間に作ったのをはがきに書いてすぐにポストに入れるのです。
 選者がもしそれをパクリだと知らずに一句でも二句でも掲載してしまえば、投稿した人は鬼の首をとったように喜んで友達に自慢してまわるのです。このようなパクリの時期は誰にも一度はある事だけれど、何年たってもこの泥棒のような段階から抜け出ることができない人がいます。気の毒なことです。

 酷いものです。私は墨汁一滴を読む途中でこの三月十三日のエッセイと前回の二月十二日のエッセイを見つけて、明治の一部投稿俳人が他人の作品を無断でパクって俳句をお気軽に大量生産して投稿する、そういう精神と、現在のスパマーがキーワード検索をかけて一字一語の共通点だけでお気軽にトラックバックスパムを一斉送信する精神とが非常に似ていると思ったのです。
 二月十二日のエッセイで正岡子規が「ましてその題が火燵(こたつ)、頭巾(ずきん)、火鉢(ひばち)、蒲団(ふとん)の類(たぐい)なるにおいては読まずしてその句の陳腐なること知れ申候」と書いたのは、以上のような事情から、コタツ云々の語句を使うのが悪いというのではなく、パクリでも無断転載でも何でもいいから手当たり次第言葉をつなぎ合わせて五七五の文字列を作って投げつけてくる人たちに失望し、愚痴の一つでも言ってみたくなったのではないかと思ったのです。多分まじめに芸術活動をしようと願う人がコタツを題にして俳句を読んだのなら、こういう文句の言われ方はしないでしょう。



■おまけ

 三月十三日の正岡さんの証言に基づいて、明治時代の一部投稿職人のはがきを現代風にアレンジし、再現しました。こんな感じの投稿ばかりだったら相当へこむと思います。

 俳句コーナー開設おめでとうございます。みんなの八重桜です。
 ところで今回はフトンをお題にして四つも俳句を思いついてしまいました(笑)。私ってひょっとして天才?(爆)どれもいい句だと思うので、ぜひぜひ掲載してくださいね。ぺこりm(_ _"m)。

フトンをお題に詠める。

晴れた日にフトン干したる春の朝
晴れた日にフトン干したる夏の朝
晴れた日にフトン干したる秋の朝
晴れた日にフトン干したる冬の朝

 他にも思いついたので書いときますね。やっぱ天才?

コタツ出て裏の小山に上りけり
フトン出て裏の小山に上りけり
頭巾被り裏の小山に上りけり(字余り)
火鉢置き裏の小山に上りけり

posted by ちんこ寺 at 23:49 | Comment(5) | TrackBack(0) | 博物誌 b_entry.gif

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