2006年10月07日

銀河ブログ協会の冒険 その3

■エミン・ラダク

 エミン・ラダクは銀河のブロガーである。彼のブログは、一言一句にいたるまで自分の見栄と体面を保つための欺瞞的修辞に満ち溢れていた。彼の書いた文章は常に、彼を嘲笑する者が現れはしないかという恐怖に基づいて旋回しており、彼の思考はやがて現れるであろう「嘲笑者」の嘲笑を如何にして回避し、己の見栄と体面を如何にして守るか、その一点にキリのような鋭さで集中していた。

 そんな彼に対して、笑われるのが嫌なら何も書かなければよいではないかと忠告する人もいないではなかった。しかし彼はそのような忠告を聞くたびに、鍛え抜かれた欺瞞的修辞に満ち溢れた文章で反論して相手を沈黙させた。もちろん相手はやり込められて沈黙したのではなく、親切心から、あるいは素朴な疑問から質問をぶつけただけなのに何千字もの反論記事を送りつけられてあきれ果てて口をつぐむだけなのであるが、彼はただひたすら気づかないふりをして相手が沈黙するまで反論記事を書き続けるのを止めなかった。

 ボクヲワラウナワラウンジャナイヤメテクレボクハボクノおなにーブンショウヲタレナガシテイルダケナンダボクヲセメナイデクレデモボクノおなにーヲミンナニミテモライタインダホメテホシインダオネガイダヨ。

 彼がいつから見栄と体面の虜になってしまったのかは定かではない。一説によると、ブログ開設間もない段階でたまたまヒットを飛ばしてしまい、そのときの快感を忘れられず、かといって二度と同じようなヒットを飛ばす才能もないという現実に責めさいなまれた結果だとも言う者もいるが、当の本人はひたすら自己弁護と欺瞞に満ちた反論記事を書くこと以外のことをしないので、真偽のほどは明らかではない。

 彼はブログを書くときに、常に自身の見栄と体面を守れると思われるような内容の記事しか書かなかった。彼の記事はほぼ毎回、何となく多数決で可決されそうな当たり障りの無い内容を、表現を極端にすることで脚色しただけの代物である。だから読んでもまったく面白くない。にもかかわらず曲がりなりにも読者数を増やしてしまったのは、ひとえにブロガー同士に同病相哀れむ部分が少なからずがあったからだろう。彼の書くことは確かに面白くない。しかし、彼の見栄を保つために手段を選ばない滑稽さは多くのブロガーの心の恥部を大なり小なり刺激するものであり、そういう無意識的な刺激がアクセスという形を伴って彼のブログに還流しているのであろう。要するに多くの読者が彼の滑稽さを心の中で嘲笑し、何となくまた彼の愚行を見に行きたい、見ることで俺は私はこのエミン・ラダクなる見栄っ張りブロガーよりはマシだまだ大丈夫だという安心感を得たいという欲求を満たすために彼のブログを読みに来るのである。



ソグ・キマ編に続く
posted by ちんこ寺 at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(1) | 銀河ブログ協会の冒険 b_entry.gif

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