銀河ブログ協会長官ソグ・キマは激怒した。なんだこの報告書は、まるで報告書の体を為していないではないか、だいたい最初の2,3行を読んで全体のわからない報告書など報告書ではないという趣旨のことを調査員ローゲ・ロゲに対して、巻きぐその如き執拗さで責め立てた。ローゲ・ロゲはゲロを吹いて昏倒した。
ピピー、ピピー。
「秘書室です。調査員カバラ・スウが長官に面会を求めています。ネアンデルタール人がなんたらかんたらとわめいて居られますが」
「その件はカバラ・スウに任せてある。奴の好きにさせろ」
人類は救われた。ピピー、ピピー。
「秘書室です。ブロガーのグーテンモルゲンが挨拶にこられました」
「殺せ」
銀河ブログ協会長官ソグ・キマは多忙を極めている。下らない報告書を読む暇はないし、挨拶しかできないブロガーと会う時間もないのだ。しかしブロガーから鬼のソグ・キマと恐れられているこの男は、吐寫物にまみれたローゲ・ロゲの気道確保をしてやることも忘れてはいない。やがてローゲ・ロゲは意識を取り戻した。
「長官、おっしゃることは良くわかります。しかし、エミン・ラダクなるブロガーはKUSO紳士録荒らし事件への関与を自身のブログで公言しており、さらに今回のノコノス事件においては、この事件への言及をしない旨を書き込んでいます。それらの事実をあわせて考慮しますと……」
ソグ・キマは調査員ローゲ・ロゲのゲロまみれの顔面を直視しながら思う。報告書はろくなものを書けないし嫌な匂いも振り撒くが、こいつは大した奴だ。こいつはいつもゲロを吹いて昏倒するが、そのことで仕事の支障をきたすことは一度も無い。今だって意識が戻るなりさっきの話の続きを平然と続けているではないか。
「つまりは、こういうことか。ノコノス事件発生後エミン・ラダクは事件への非言及を公言している。これはKUSO紳士録荒らし事件のときと反応は真逆であるけれども、類似点がある。エミン・ラダクは実際はノコノス事件に関与しているにも関わらず、何らかの理由で関与を隠しているのではないか?こういうことをいいたいのか?」
「はい。そのとおりです。詳しくは報告書の後半に書いてありますので、お読みください」
「そういうことは文頭に書けばか者」
ローゲ・ロゲはゲロを吹いて昏倒した。ソグ・キマはおもむろに立ち上がり、不思議な液体で溢れているローゲ・ロゲの口に手を入れて気道を確保してやり、手を拭いて、もう一度手を拭いて、報告書を手に取った。
銀河ブログ協会ソグ・キマ。人読んで鬼のソグ・キマ。しかし、部下の多くは彼のことを仏のソグ・キマと呼ぶ。
エミン・ラダクその2に続く