2006年01月26日

アンチユートピアSFポリティカル・ノベル スパムの総和

―むだづかいにっき♂関連仲間文化圏が多数派になると、ブログは死滅するの著者えっけん氏と、我が最愛の妻に捧ぐ―



■PART1 クレムリンの焦燥

―午前3時14分8秒 19日 1月 2038年 クレムリン・モスクワ ソビエトユニオン―

 クレムリンから見下ろすモスクワの街は、氷の中の深い眠りにつくがごとく、ひっそりと静まり返っていた。しかし、ソビエト連邦書記長スパムイヨは休息を知らず、書記長室からは暖かい光が漏れ出でていた。

「失礼いたします、スパムイヨ同志、緊急事態です」

 静寂を破り、国家トラックバック局長官ネンチャコフが息せき切って書記長室に駆け込んできた。

「どうしたのだネンチャコフ同志、落ち着きなさい」
「落ち着いてなどいられるものですか、書記長。いま入った情報ですが、わが国の秘密警察がクーデターを起こし、関連仲間至上主義を唱えて同志を糾合し、ホワイトハウス公式ブログ「大統領はお元気?」に対し、同時多発的に2450万発のトラックバックを打ち込みました」

 スパムイヨ書記長は驚倒した。

「なんだと!?それで、ホワイトハウス公式ブログはどうなっている?」
「はい、すでにサーバーがダウンし、閲覧不可能な状況が続いています」
「いかん、すぐにホワイトハウスにホットラインをつなげ。また秘密警察のクーデターを徹底的に鎮圧せよ」



■PART2 合衆国の正義

―同時刻 ホワイトハウス・ワシントンDC アメリカ合衆国―

 ホワイトハウスは震撼した。グリーンスパム大統領はホワイトハウス公式ブログ「大統領はお元気?」がホワイトアウトした直後に緊急会議を開催した。

「今未明、ソビエトの同時多発的無差別トラックバック2450万発によって、わが国の公式ブログは完全に沈黙した。この暴挙を許してはおけない。諸君はどう思うかね」

 スパムウェル国務長官が答えた。
「直ちにわが国も関連仲間と称してトラックバックを大量送信し、クレムリン公式ブログ「赤の広場で働く書記長の日記」を完膚なきまでに叩き潰すべきです。国民も喜んでトラックバックを連発してくれるでしょう」

 そのとき、クレムリンからのホットラインが大統領にもたらされた。

「我が同志、グリーンスパム大統領、私だ、スパムイヨだ。今回のことは私としても非常に残念に思う。我々はすでにテロリストたちの鎮圧に成功しつつある。同志グリーンスパムには行動を自重し、今後の対処は私たちに任せてもらえないだろうか?」

「親愛なるスパムイヨ。我々はこのテロリズムを許すわけには行かない。仮に私が許してもアメリカの正義が許さぬのだ。これ以上話すことはない」

 グリーンスパムは電話を置くと、即座に命令した。
「関連仲間トラックバック大量送信用意。この話題を意図的にマスコミにリークし、民間からも大量のトラックバックが打ち込まれるように情報を操作せよ」



■PART3 スパムイヨの決断

 受話器を置きながら、スパムイヨは深くうなだれた。
「同志ネンチャコフ、グリーンスパムは報復としてわが国に同時多発的大量トラックバックを送るつもりのようだ」

「書記長、それでは……」

「うむ。我々に残された手段は一つしかない。向こうがトラックバックを打ってくる前に、東側のブログを結集して大量トラックバックを打つしかない」



■PART4 ジャンク・ライアンの憂鬱

 ジャンク・ライアンは急いでいた。なんとかしてホワイトハウスの報復を止めなければならない。ライアンは会議解散後に、大統領に面会を求めた。

「大統領、ジャンク・ライアン氏が面会を求めていますが」
「なに、ライアンが?すぐ通しなさい」

 ライアンは早速大統領に詰め寄った。
「大統領、私はスパムイヨを個人的に知っています。彼は今回のような無差別トラックバックを打つような人物ではありません。しかし先ほどの大統領の言葉を受けて、彼は先制トラックバックを打つ決意を固めたでしょう。もしそうなったら、世界がどうなるかお分かりですか?」

「君はなにを言っているんだ?相互確証破壊が破られたのだ。我々が先に同時多発的大量トラックバックを送信するしかないではないか」

「違います、大統領。私にチャンスをください。必ず、スパムイヨを説得して見せます。私には確信があります。お願いします」

「わかった。3分だけ時間をやろう。ホットラインをクレムリンにつないでくれ」



■PART5 スパムの総和

 頼む、スパムイヨ、話を聞いてくれ。ジャンク・ライアンは祈る気持ちで受話器を握り締めた。やがてホットラインがつながった。

「こちらはスパムイヨだ」
「お久しぶりです、同志スパムイヨ。ジャンク・ライアンです。今回は両国とも非常な不幸を体験しました。そのことについてお話したいのです」

「ライアン、もう話すことなどないのだよ。私も世界の半分を背負う身だ。私の決断を後世の人民たちも評価してくれることだろう」

「スパムイヨ、私たちのしようとしていることは危険すぎる。考えても見てくれ、あなたが東側のブログを結集して無差別関連トラックバックを打ったとしよう、それで例えわが国を沈黙させることができたとしても、他の西側諸国が無差別関連トラックバックを貴国に打ち込んでくる。そうやってスパムの総和が抑えきれないほど膨れ上がったとき、私たちは取り返しのつかない破滅への道を歩むことだろう。私たちはすでに人類を数十回滅ぼせるスパムを手にしてしまったのだ。……どうか分かって欲しいスパムイヨ、わが国は2450万発のトラックバックを受けた。十分に痛手を受けたのだ。その上で、貴国にトラックバック準備の中止を求める。このまま世界に2億4500万発、いや245億発のトラックバックがばら撒かれたら、世界が滅びる。お願いだ、このままではスパムの総和が……」

 電話が切られた。大統領がゆっくりとライアンに話しかけた。
「タイムアップだ。我々はこれ以上待つことができん。今から無差別関連トラックバックをクレムリンに向けて発信する」

 そのとき、スパムウェル国務長官が駆け込んできた。
「大統領、ソビエトのブログからのトラフィックが急激に減少し、平常値に戻りつつあります!」
「なんだと、これはどうしたことだ?」

 再びホットラインがつなげられた。
「大統領、クレムリンからです」
 グリーンスパムは受話器を握り締めた。
「グリーンスパムだ。貴国からのトラフィックが減少して平常値に戻りつつある。これはどういうことかね?」

「同志グリーンスパム。わが国は先制トラックバックの脅威にさらされる危険を冒しても、スパムの総和から世界を救うことを選んだのだ。同志よ、我々の苦渋の決断をなんとかして分かって欲しい。そして貴国にもスパムの総和を食い止める勇気を期待する」

「……貴国の誠意はよくわかった。我々も無差別関連トラックバック準備を中止しよう。今回の不幸な事件を乗り越え、両国が更なる繁栄を享受することを切に願う」

 危機は回避された。人類は自らを滅ぼして余りあるスパムの誘惑に対し、「送信しない勇気」でもって偉大なる勝利を手にしたのだ。しかし忘れてはならない。この偉大なる勝利は同時に小さな一歩に過ぎない。我々は自らがスパムの総和への道を歩まぬよう、送信しない勇気を持ち続けなければならない。



■エンディングテーマ

月曜日は検索かけて トラックバックを10発打った
トゥリャトゥリャトゥリャ トゥリャトゥリャトゥリャリャ
トゥリャトゥリャトゥリャトゥーリャーリャー ヘイ!

火曜日は検索かけて トラックバックを100発打った
トゥリャトゥリャトゥリャ トゥリャトゥリャトゥリャリャ
トゥリャトゥリャトゥリャトゥーリャーリャー ヘイ!

水曜日は検索かけて トラックバックを1000発打った
トゥリャトゥリャトゥリャ トゥリャトゥリャトゥリャリャ
トゥリャトゥリャトゥリャトゥーリャーリャー ヘイ!

木曜日は検索かけて トラックバックを10000発打った
トゥリャトゥリャトゥリャ トゥリャトゥリャトゥリャリャ
トゥリャトゥリャトゥリャトゥーリャーリャー ヘイ!

金曜日は検索かけて トラックバックを100000発打った
トゥリャトゥリャトゥリャ トゥリャトゥリャトゥリャリャ
トゥリャトゥリャトゥリャトゥーリャーリャー ヘイ!

土曜日は検索かけて トラックバックを1000000発打った
トゥリャトゥリャトゥリャ トゥリャトゥリャトゥリャリャ
トゥリャトゥリャトゥリャトゥーリャーリャー ヘイ!

日曜日にブログ開いたら トラックバックが10000000発来てた
アカウントは即座に停止 ブログも丸ごと削除され
友達よ聞いてくれこれが 私の一週間なのです
トゥリャトゥリャトゥリャ トゥリャトゥリャトゥリャリャ
トゥリャトゥリャトゥリャトゥーリャーリャー ヘイ!



―完―
posted by ちんこ寺 at 23:54 | Comment(2) | TrackBack(0) | 妄想 b_entry.gif
この記事へのコメント
そんなヤツに友達はいないと思う〜
トゥリャトゥリャトゥリャトゥーリャーリャ〜

ロシア人風の名前って何でギャグにしやすいんだろう?
モメゴトスキーとか。
Posted by えっけん at 2006年01月27日 00:06
なぜギャグにしやすいのか…それは永遠のなぞです。確かに書きながらソビエト側の人物名ばかり思いつきました。

スパムコフ
ムダニリンクスキー
ジャンクメルスコワ
などなど。

モメゴトスキーはモメゴトフにしたほうがロシア人っぽいと思いました。
Posted by ちんこ at 2006年01月27日 00:58
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