2006年04月16日

ライオンとシマウマのたとえ話とシマウマ進化論

■ライオンとシマウマの話に興味を持った

分裂勘違い君劇場‐「おまえも空気の奴隷になれ」って?「空気読め」の扱い方次第で人生台無し
ブロシキ‐論理とかコミュニケーションとか

 以上の二つの記事で取り上げられている「ライオンとシマウマ」のたとえ話に興味を持った。なぜ興味を持ったかというと、ホモ・サピエンスの後天的な個体差の問題である「空気を読む」というどうでもいい問題から、ライオンとシマウマの自然界における関係というより高度な、より本質的な概念へとアウフヘーベンされているからである。この点については、たとえ話を持ち出した分裂勘違い君劇場のfromdusktildawn氏と、数ある論点の中でライオンとシマウマの話を選んで話題を広げたsantaro_y氏の見識の高さを賞賛しなければならない。

 そこで私も、ライオンとシマウマと大自然の理について(特にシマウマの進化について)、おおいに語りたいと思う。



■二つの記事のまとめ

 さて本論に入る前に、上記二つの記事がライオンやシマウマ(大自然)についてどのように記述しているかを以下のようにまとめる。

分裂勘違い君劇場
・シマウマにとって、ライオンは、悪そのものである
・なぜ、歯と筋力が悪になったのかというと、シマウマの歯と筋力が、ライオンの歯と筋力よりも劣っているからだ
・ライオンにしてみれば、歯と筋力は、善である。なぜなら、自分の歯と筋力が優れているからだ
・歯が強く筋力が強靱ということは、一般に、生物にとって「良い」ことである
・ライオンの価値観というのは、生命を謳歌するためのポジティブ要因を善とする価値観
・シマウマの価値観というのは、生命を謳歌するためのポジティブ要因を、悪だと考える価値観

ブロシキ
・なぜシマウマはライオンを目指さなければならないのか?
・進化の世界は何らかの要素を指して「一般にポジティブな意味」とはどうも言えそうにない
・草食動物は肉食動物がいなくても生きていくのに困らない
・肉食動物は草食動物なくして生きていくことができない


 以上を踏まえて、私がこの記事で言及したいことは以下のようである。
・草食動物は肉食動物がいなくなると困る場合がある
・進化における有利不利は周りの環境の変化によって大きく変化する

 順番に説明していく。



■草食動物は肉食動物がいなくなると困る場合がある

 まず下記のリンクを参照し、実際にflashで遊んでみてもらいたい。

生態系ピラミッドのシミュレーション

 このシミュレーションは、リンク先の記述にもあるとおり、正確なものではない。しかし、生態系のバランスを大略において知るためには非常に優れた教材である。
 ここで表題の「草食動物は肉食動物がいなくなると困る場合がある」の話しに入る。まずシミュレーションのピラミッドのうち上から三つ(肉食動物)を0にしてみて欲しい。そうすると一旦上から4段目(草食動物)の層が大きくなって、やがて最下部の植物の層が縮むにつれて、一緒に消滅してしまうのが分かると思う。つまり、肉食動物がいなくなると、草食動物は一時的に数が増えるが、やがて食料を食い尽くして飢え死にしてしまう場合があるのだ。もちろん植物が豊富にあって余り影響のない場合や、草食動物が雑食性に進化した場合など、絶滅を回避できる要因はいくらでもあるが、いずれにせよ草食動物には大きな危機が迫るので、肉食動物がいなくなると困る場合があるということが分かる。



■進化における有利不利は周りの環境の変化によって大きく変化する

 ここより本論に入る。
 私はライオンとシマウマのたとえ話と、草食動物は肉食動物がいなくても生きていくのに困らない、という話を読んで考えているうちに、一つの魅力的な発想に取り付かれた。

「もしライオンをはじめとする捕食者がいなくなったら、シマウマはどのように進化するだろうか」

 捕食者がいなくなったアフリカの大平原で、食物を食べつくすことによる絶滅の危機からシマウマが生き残るとしたら、どのような進化を遂げるだろうか?ということを、これから順を追って述べてゆきたい。


21世紀初頭 アフリカ中央部 サバンナ地帯

 ライオンをはじめとする肉食動物に謎の奇病が蔓延、アフリカ大陸の肉食動物は死に絶えた。そこで多くの草食動物が天敵のいない世界で子孫を増やし、繁栄をはじめるかに見えた。


22世紀初頭 アフリカ中央部 旧サバンナ地帯

 かつて一面の草原であったサバンナの大地も、荒れ果てた地肌をあらわにし、草一本生えない荒地に変わってしまった。ごく少数のバオバブ等の乾燥に強い木がまばらに散らばっている程度である。
 この状況下で多くの草食動物に強力な淘汰圧がかかり、ほとんどの種が絶滅の危機に瀕した。そこでシマウマには二つの異なった進化の兆しが現れはじめた。一つのグループは首が長く伸び、木の実や葉を食べるようになり(クビナガシマウマ)、もう一つのグループは、体高が低くなり、地下茎を掘り返して食べるようになった(ツチシマウマ)。


25世紀初頭 アフリカ中央部 旧サバンナ地帯

 21世紀に存在したシマウマはすでに絶滅した。そしてかつて二つのグループに枝分かれした新しいシマウマたちの中でも、クビナガシマウマが自然の淘汰に負けて、いま滅び去ろうとしている。
 食料となる草の欠乏から、より高いところに成る木の実や葉を食料に選んだことで、徐々に首を伸ばし、新しいニッチに収まったかのように見えたクビナガシマウマだったが、ここに強敵が出現した。
 キリンである。
 キリンはクビナガシマウマが首を長く伸ばす前から木の葉を食べており、減少した食料をめぐって新参者のクビナガシマウマに熾烈な食料確保の戦いを仕掛けてきたのだ。
 それにたいしてクビナガシマウマは首こそ長くなったものの、心臓のポンプ圧を強くさせることが出来なかったせいで、長時間首を立てることが出来ず、少し葉を食べては頭を下げてやすめ、また食べては休めの繰り返しをしないと貧血で倒れてしまうという弱点があった。
 ここにおいてクビナガシマウマはキリンとの食物確保戦争に敗れ、次第に個体数をへらしていった。

 一方ツチシマウマは、あまり競合のいない中で地下茎を食べ続け、独自の進化を遂げていった。体高はますます縮み、前足のひづめに凹凸が出来始めた。これは新しい指の誕生の兆しである。
 かつてウマ科の動物は足の指を減らすことによって速力を増し、肉食動物から逃れる能力を磨いていった。しかし今はもう肉食動物はいない。そこで逆に指を増やす方向に進化しだしたのだ。地下茎を掘るためには、一本指の蹄ではやりづらい。そこで、蹄に凹凸のある個体がより上手に土を掘ることができ、より多くの食料を手に入れることが出来るようになった。
 しかしツチシマウマにも脅威がある。雨季である。多くの草木が受け皿になって水を吸収してくれていた遠い昔と違って、今は頻繁に洪水が起こり大地を埋め尽くすことが多くなった。この時期になると逃げ遅れた仲間が大量に溺死する。今のツチシマウマにはこの洪水に対処する能力は無い。しかし、いつの日かこの大自然の驚異を克服する進化を遂げるに違いない。


30世紀初頭 アフリカ中央部 旧サバンナ地帯

 いまやクビナガシマウマは完全に絶滅した。長い首に血液を送る心臓をどうしても強化できず、キリンとの熾烈な食糧確保の争いに敗れ去ったのだ。

 ツチシマウマは相変わらずツチを掘って地下茎を探している。しかし、その外見はウマとは似ても似つかないものになっていた。
 体長約30センチ、全体的な形は、モグラに似ている。蹄から進化した強力な前足にはツチを掘るための鉤爪がついており、より深く、より短時間でツチを掘れるようになった。また、後ろ足の腿や前足の脇の部分に折りたためるようになった皮膚のたるみが出来ている。これは雨季の洪水の際に水の流れをとらえて泳ぐように進化したしるしである。他にもピンとたっていた耳は後方に垂れて首に密着し、その首も極端に短く、体の形は全体的に流線型に変化している。かつてこの動物がシマウマであったことをほのめかすのは、体表を覆う黒と白の縞模様だけである。
 シマウマやクビナガシマウマはもう死に絶えていない。しかしツチシマウマはこの生き残りをかけた戦いに勝利し、新しい自然環境に適応した。彼らはこれからも、自然の淘汰圧にさらされながら、新しい進化の道を歩むことだろう。



■最後に

 以上、私が書きたかったのは、架空のシマウマ進化物語である。みなさん本当にありがとうございました。

主要参考文献:
wikipedia-シマウマ
wikipedia-キリン
wikipedia-サバナ気候
wikipedia-クアッガ
多様性を求めての旅‐動物について‐シマウマ
生物のサバイバル戦略−共進化
posted by ちんこ寺 at 17:56 | Comment(4) | TrackBack(1) | 妄想 b_entry.gif
この記事へのコメント
こんにちは
シマウマ、マンアフターマンの記事興味深く読ませていただきました
BBSにて紹介させてもらいました
Posted by yazyu at 2006年04月16日 21:02
yazyuさんこんにちは。
紹介ありがとうございます。最近またマンアフターマンを読み返して、あまりの素晴らしさに再び感動し、自分でもやってみたいと思ったのですよ。
Posted by ちんこ寺 at 2006年04月16日 22:41
お褒めの言葉光栄であります。
紹介されているリンク先がやたら興味深いんですが、その前に陳子。千年足らずでそんな劇的に進化しねーと思われます。どうも人為(遺伝子操作?)が入ってるような・・・
Posted by santaro_y at 2006年04月17日 01:55
こんにちは。
確かに1000年で急激な進化はしづらいと思いました。短時間に強い淘汰圧がかかった場合、生き物も急激に進化するだろうと思ったのですが、無理があったようです。
外見上の変化はともかく、体長が30センチに縮むためには、草食動物の特長である長い消化器官を急激に縮めなければなりません。そこを考えると、1000年では無理があります。せめて5000年から10000年は欲しいところです。
Posted by ちんこ寺 at 2006年04月17日 09:42
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