2006年10月28日

銀河ブログ協会の冒険 その5

■エミン・ラダク その2

 エミン・ラダクは恐怖した。必ずやKUSO紳士録は潰さなければならない。

 KUSO紳士録とは、KUSOブックマーク利用者の有志が作り上げたWeb上の紳士録のことである。誰もが書き込めるオープンスペースにKUSOブックマーク利用者の紹介文を書けるようにし、最終的にKUSOブックマーク利用者の紳士録として閲覧できるようにしようというものである。

 この紳士録がGWW(the Galaxy Wide Web)の片隅でスタートしたとき、特に文句を言う者も無ければ、率先して話題にしようとする者もいなかった。なぜなら、普通の判断力を備えた生物ならば、KUSOブックマークの内輪で楽しんでればいいんじゃないのと思って次の瞬間には忘れるからだ。

 しかし、エミン・ラダクは違った。彼は骨の髄液の一滴までもが凍るほど恐怖した。彼の薄皮のように張り詰めた見栄と体面の膜は、KUSOブックマーク利用者に対してのみ張られていた。KUSOブックマーク利用者の間でだけ有名であればいい、KUSOブックマーク利用者にだけエミン・ラダクは大した奴だと思われていればいい、他のことは知らない、見ない、見たくない。なのに、KUSOブックマークサービスの外に、KUSOブックマーク利用者の紳士録が誕生してしまった。

 KUSOブックマークサービスはIDを発行して使われるサービスであるため、もし誰かがエミン・ラダクの悪口を書いた場合には、彼は書き手のIDをたどって相手を特定し例の基地外じみた反論記事を書きまくって相手の口を塞げば間に合っていた。今まではそれで通用していた。しかし、KUSOブックマークサービスの外に書き込み自由な紳士録ができてしまっては状況が変わってくる。まず自分の悪口を書かれた場合に相手の特定ができない。相手がわからなければ基地外じみた反論記事を書きまくることができないではないか?反論記事を書きまくることで、周りの人を閉口させることで、かろうじて保つことができていたボクの見栄と体面はどうなる?エミン・ラダクはアイデンティティ崩壊の危機に立たされた。

 彼が見栄と体面の薄い膜の内側でクヨクヨなやんでいるうちに、KUSO紳士録「エミン・ラダク」の欄には彼の見栄と体面をぶち破るようなコメントが続々とつき始めた。
「自分の体面を保つためには手段を選ばないチキン野郎」
「都合が悪くなると、わざとズレまくった議論を展開してごまかす」
「トゴネマ・ノン・ロギと同一人物」

 かくして、エミン・ラダクは完全に発狂した。

 必ずやKUSO紳士録は潰さなければならない。彼はKUSO紳士録の人物名簿を消して回ることを決意した。自分の欄はもとより、自分に関係のない人物の欄まで片っ端から消して回った。KUSO紳士録の存在自体が許せない。もうこうなったらボクが死ぬかKUSO紳士録が死ぬかのどちらかだ。アハハ、アハハ、ドレカラケシテコーカナー。ねえママ、ボクはすごいんだよ?紳士録のどの欄でも自由に消せるんだよ、ほらね、今消したよ、すごいでしょ?ボクは全能だ、どんなコメントだって消してみせる、ボクはボクの見栄を傷つけるコメントは消去して見なかったことにできるんだよ?アハハ、アハハハハ……。

 数日後、久しぶりに更新された彼のブログ「体面是命」には、誇らしげに以下の文字が躍っていた。
「KUSO紳士録の情報を消して回っているのは私です」
「私がやりました」
「ああゲロッてやるよ、やったやったやったった、やったがどうしたザマーミロ、ブェヘへへへ」
 彼の周りの人間は、彼を完全に腫れ物として扱った。だれも彼の卑劣な荒らし行為を正面切って弾劾はしなかった。これは彼の周囲のブロガーが優しかったということでは断じてなく、発狂した相手に対して多くの人が無意識にとる自衛反応であったに過ぎない。だれも背後から刺されたいとは思わないからだ。

 こうして「KUSO紳士録荒らし事件」は、なんとなく後味が悪いままうやむやになり、KUSO紳士録自体もうやむやのまま放置されることとなった。



トゴネマ・ノン・ロギ編に続く
posted by ちんこ寺 at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(1) | 銀河ブログ協会の冒険 b_entry.gif
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