2005年07月12日

日本の伝説 鶴の雪女【ま行抜き】

1 遭遇
遠い過去のことだが、猟師の親子が吹雪に遭い、山中に立ち往生した。横殴りに吹きつける雪は、熟練した山岳の猟師親子さえも太刀打ちできず、この様子では凍死するかと覚悟したとき、運良く小屋を発見し、中に逃げ込んだ。

猟師の親子は小屋の中で火を熾し、暖をとりながら吹雪をやり過ごすことにした。

しばらくして、子は刺すような冷気のせいで意識を取り戻した。どうやら寝ていたらしい。先ほど熾した火も消え、灰がくすぶっているばかり、なぜか小屋の戸が開いて外気が入り込んでいる。そして父のほうへ視線をやると、なんだか白い霧が父の上にかぶさり、顔から生気が引いていくところだった。

子は、父は死んだなと直感した。白い霧は父から生気を奪うと、次は子の方へ近づいてきた。近づくにつれて靄は何かの形を取りはじめ、子の近くについたころには若い女性の姿となった。具体的に言うとフェイ・ウォンそっくりだった。

子の前に立ったフェイ・ウォンに似た霧は、子の顔を覗き込むと言った。
「年軽的人、現在不殺。説話不要許把面見我誰。要是説話就死」
子は、このフェイ・ウォンが何を言っているか全然分からなかった。しかし、この出来事を人に話したら殺されるんだなということは、場の雰囲気でなんとなく察して、震えているのかうなづいてるのか分からない返事をした。やがて白い霧は消えた。


2 運命
気がつくと、吹雪はやんでおり、親は凍死していた。子は己の親を殺した昨夜の雪女を恐れ、憎んだ。
時を前後して、隣の山では罠にかかって身動きの取れない鶴が親切なおじいさんの勘違いで笠を被せられて息絶え、その隣の山では同じように罠にかかった鶴が、判断力の衰えていない男に助けられていた。二羽の鶴の間には何の相関を見つけることができず、単に偶然が生死を分けたといえる。


3 とりかへばや
さて運良く助けられた鶴は冬の冷気を避けるため中国大陸から飛来し、知人の家を渡り歩きながら南国へと旅する途中だった。鶴は助けてくれた男のことを忘れられなかった。そこで恩返ししたいと考えて里に降り、人間の女の姿になって、新調の純白の服を着、ばっちり化粧して、それらしい男の家を訪れた。

鶴が戸をたたくと、男が出てきた。しかし男の顔は鶴の姿を見るなりこわばった。
鶴は挨拶した。
「午安。請留下一个晩上住」
さらに男の顔に憎悪の表情がありありと表れた。鶴はうっかり使い慣れた大陸の言葉を使ったので言葉が通じず、不審がられたのかと心配したが違っていた。
男は持っていたなたを振りかざして叫んだ。
「おのれ親の仇、この場で討ち果たしてくれるわ」

鶴は狼狽した。何がなんだか分からずに錯乱して逃げた。鶴は二つの失敗を犯していたことに気づかなかった。一つは相手を勘違いしたこと、二つは自分の姿が男の親を殺した雪女にそっくりだったこと。不注意と不運が重なって鶴は、なたを振りかざす男に追いかけられることになった。

鶴は悲しさと悔しさで泣き濡れたが、この誤解を放って置くわけには行かぬと決心し、山地に居る知人を訪ねて相談することにした。同じころ、久しぶりに遭難者に会って人恋しくなった雪女は、里に下りて男を捜し、勘違いして鶴を助けた男を訪ね、男と結婚した。鶴を助けた男は、吹雪の日の小屋での出来事を知らないので、その事件が言及されることは二度と無く、言葉の壁を超え、雪女と末長く幸せに暮らした。

つづく
posted by ちんこ寺 at 02:06 | Comment(2) | TrackBack(0) | 昔話 b_entry.gif
この記事へのコメント
 いわゆる、異類根因譚のお話でしょうが、日常身の回りにある、もの悲しくも人の世の常ですね。
 錯誤と、一部の情報で私達は生きているのをよく知らされますね。
 これがお互いの人生ですね。
Posted by 中根 太藏 at 2007年12月04日 18:04
難しい話は良くわからないのですが、すれ違いや錯誤はよくあることです。また、フェイ・ウォンもちょっと見ないうちに年をとりましたね。
Posted by tinkoji at 2007年12月05日 13:40
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